今回は高尾山をナイトハイキング。金曜日の夜は駅に集まって賑やかな時間を過ごすことが多いと思います。でも、何もない金曜日の夜はもったいない…。小学生の頃は、金曜日を特別視したことはありませんでしたよね。どちらかといえば、月曜日に友達と会えるのがすごく嬉しくて朝がワクワクしたような。でも、社会人がワクワクするのは金曜日なんですよね。今回は、その金曜日の夜をハイキングの時間に活用してみました。
高尾山は東京都八王子市にあるハイキングスポット。京王線の終点の駅になりますが、地図で見ると奥多摩の山々より都心寄りに位置しています。京王線には特急や準特急、急行もあるため、都心からでもそれほど時間はかかりません。高尾山口駅に到着したのは18時半過ぎ。空はまだ真っ暗になる前でした。この時間でホームには駅員以外の人はいませんでした。
改札口を出るとたくさんの登山客が待ち合わせをしている印象がありますが、この時間に待ち合わせをしている登山客はいませんでした。トイレも並ぶことなく済ませられたり、普段よりもマイペースに行動できることを実感しました。
改札を出ると、日没に合わせて下山してきた登山客が駅に歩いてきました。薄暗い中でもライトをつけずに目の暗順応だけで降りてくるのは高尾山道の安全性が管理されている証拠だといえます。しかし、この時間帯から登山道へ上がっていく人はいませんでした。
駅改札を出てすぐ上を見ると綺麗な桜が咲いていました。都心よりも山は満開期が遅れるため、桜の花はまだ散る前の綺麗な状態を保っていました。
高尾山口駅のコンビニ売店をはじめ高尾登山鉄道清滝駅までの遊歩道に並ぶお店も営業時間を終了していました。
高尾登山鉄道清滝駅前の広場に到着。広場にはほとんど人がいませんが、広場の前で車を停めて写真撮影をしているカップルがいました。広場の右側には薬王院へ続く1号路の入口があり、左側には稲荷山の登山道入口と渓流沿いの6号路入口があります。今回は高尾山のナイトハイク1回目となるため、大胆なことはせずに1号路を往復することを決めました。
夜間の1号路は門が閉鎖していました。しかし、これは車両の進入を禁止するものであって、歩行者の進入口にあっては門の右側を通過するように案内標示が出ています。しかし、今回の下山時には薬王院に向かってバイクで走行してくる人とすれ違いました。早朝の高尾山でもバイクで上がっていく人を見ますが、その時よりもスピードが速いため衝突事故に注意してハイキングをしてくだい。夜間は傷病者の発見が遅れ、救急搬送に支障を与える条件が増えることを念頭に置いて行動しなければなりません。
筑波山のナイトハイキングでも紹介していますが、今回もこのライトを使用しました。1号路の最初はイメージしていたよりも暗く、ライトを消すと周囲が何も見えなくなりました。高尾山のナイトハイクではヘッドライトを使用した下山者とすれ違う機会がありました。その下山者達とすれ違う際、視界がすごく眩しくなることがわかります。誰でも気になるものがあればその方向に視線や顔を向けてしまう習性があるはず。ヘッドライトをつけた登山者が暗い中で気になる方向に顔を向ければ、その先が明るく照らされる仕組みになっているのです。しかし、このライトは常に足元から前方周囲を照らしているため、すれ違う人の顔を照らすことはありません。
桜かと思い、フラッシュで写真を撮ると椛(もみじ)でした。秋は紅葉の季節ですが、春から夏にかけて広葉樹林が緑色に染まっていくのも自然の魅力になります。
金比羅神社・金比羅台園地入口に登るまでは、厳しい坂が続きます。昼間はここらへんで「ちょっとタイム」と言いながら一休みしている人を見ますよね。でも、ナイトハイクはなぜか息の切れる感じがしないんです。視界の条件が制限されて急いで歩けないため、歩幅を狭くしてゆっくり歩いていたことが省エネのポイントと考えられます。
この日は高尾登山鉄道が登る高尾山駅付近で最初の動物と遭遇しました。「テン」というイタチ科の動物ですが、2m程度まで近寄っても逃げていきませんでした。こちらの顔を見ながら落ちているものを素早く拾ってパクパク食べていました。体長は小型犬よりも一回り小さく尻尾が太く短かったです。他にも同じような顔をしている「ハクビシン」がいました。主色は黒と茶色で、体長がテンよりも一回り大きかったです。大きな違いは尻尾で、ハクビシンは細長い尻尾になります。テンやハクビシンは動きがとても素早いですが、何度も挨拶に来てくれました。
香住、ビアマウントのところからは少しずつ路上にライトが設定されています。ここでは、昼間はたくさんの人が都心の展望を堪能しています。ナイトハイキングでは昼間とは違った夜景を楽しむことができます。夏は虫に刺されるのが嫌という女性がほとんど。それなら、虫がたくさん出てくる前に登ってみるのもいいかもしれません。ビアマウントの先には霞台があり、都心の展望はここに負けていません。霞台はベンチと大きなテーブルがあり、水道もあるため弁当を持参してきた場合にお勧めの休憩地点となります。ベンチにリュックを置いて自動販売機のところへ向かっていると、勝手にリュックが動き始めベンチから落下してしまいました。テンとハクビシンが挨拶を繰り返す理由はリュックだということが分かりました。しかし、ここを過ぎるとテンとハクビシンに会うことがなくなりました。
霞台の先にサル園・野草園があります。さらに先を進むと高尾山パワースポットとして有名なタコ杉があります。樹齢は450年の巨大杉で隣にあるタコの石碑を撫でることで運を引っ張る(開運)ご利益があるといわれています。そこを過ぎれば薬王院の浄心門があります。
浄心門には「霊氣満山」と書いてあります。満山という言葉を辞書で調べると、寺院全体や僧全員を意味しています。ここからはライトも必要がないほど明るい道になっています。薬王院前までは、大きい虫取り網を持ってテン、ハクビシン、ムササビを追い掛け回しているグループがいました。しかし、ここを過ぎるとそのような人にも会いませんでした。
この分岐地点は仏舎利塔と言われています。左側は男坂と呼ばれ、3号路と並行しながら進むルートで都心の景色を観ることもできます。右側は女坂と呼ばれ、4号路と並行しながら進むルートで綺麗で歩きやすい道になっています。
私は右側の女坂を選択してみました。ライトをつけなくても明るくてとても歩きやすかったです。この先は権現茶屋で男坂と合流し、さらに先まで進みました。周囲の余計な音はなく、風で森林が揺れる音が静かに聞こえてきました。時々すごい風が吹いた時は、となりのトトロで猫バスが走っていくように木が揺れていました。
これは二つ目の門となる四天王門です。金剛力士が両サイドに立っています。夜に金剛力士の目の前で顔を眺めるのは少し勇気が必要かもしれませんね。
四天王門の内側左に大きな飯縄大権現の面がありました。夜間のハイキングでは見えるものが制限されてくるため余計なものを見なくて済むという利点があります。このように、今まで気づかなかったものを発見するチャンスが多くあると考えられます。
四天王門をくぐり広場へ出ると最初に水場がありますが、この水は止まっていました。ここに来るたび水がすごく冷たかったため、湧水と勘違いしていました。
昼間にこの広場へ来るとたくさんの人がいて参拝の列をつくる個所が多くあります。でも、夜間は自分しかいませんので参拝を諦めたりする必要はありません。
仁王門に到着。この階段を登ると薬王院大本堂があります。階段の手前に何か立てかけてあることに気づきました。
仁王門を正面から撮影しました。仁王門の中にも金剛力士がいます。段数が多いため、焦らず転倒しないようにゆっくり上がりましょう。夜でも階段にライトが照らされ、足元が暗くなることはありませんので安心してください。
仁王門をくぐると明治34(1901)年に建立した薬王院大本堂が真正面にあります。大本堂正面には立派な注連縄(しめなわ)が下がり、カメラにもしっかりと写っています。
薬王院大本堂の裏には飯縄大権現堂と奥之院不動堂があります。1号路から頂上に行く際は、ここを通過地点にすることが多いと思います。
夜間は薬王院の奥が閉鎖されているか不安になりましたが、専用の通過路(夜間迂回路)が開けられていました。
昼間ならこの写真の正面にある道を通過できますが、夜間は左側の夜間迂回路を使用することになります。
薬王院を過ぎると、光は一切ありませんので1号路でも気を抜けないことが分かりました。テンやハクビシンどころの大きさではない動物が私の気配に驚いて崖からドサドサ落ちていきました。それに対して私も驚き、今度は口笛や足音を大きくして歩くことで更に違った動物が走り始めました。私が動くことで近くの動物が驚いて走りだし、それに驚いて違った動物まで走り出すため悪循環が生じます。正体が何だかわからないまま高尾山の頂上まで到着していました。
19:00に京王登山鉄道清滝駅前の広場を出発し、頂上の到着が20:30になっていました。頂上だったら誰か一人くらいいるだろうと予想していましたが、この日は本当に誰もいない日でした。社会人にとって金曜日は、趣味に費やすよりも人とのお付き合いに費やす時間が多いため、いつもより空いているのかもしれません。ハイキングだけではなく、他の趣味でも金曜日は同じことが言えます。
この日は雲ひとつなく、星がたくさん見えました。昼間の頂上は人が多くて座る場所を確保するのが困難になります。でも、夜間は人がいないため好きな場所でゆっくり景色を眺めることができました。3月に比べると寒さも少しずつなくなってきたため、いつもより長く休憩をとっていても体が震えることはありませんでした。
頂上にある桜です。頂上の自動販売機に照らされ、桃色の綺麗な花が風によってひらひら揺れていました。
これは高尾山頂上から小仏城山に続く登山道です。この2つの山の間には一丁平があります。昼間のハイキングなら30分程度で到着します。ここは桜がたくさん植林されているため、春のシーズンはピンク一体に染まります。登山を趣味としているなら、1年の中でこの時期に合わせて一丁平に行ってみることをお勧めします。
こっちに写っているのは稲荷山の登山道になります。私は、今回の動物との遭遇により、一丁平や稲荷山の登山道を選択するのは危険と判断しました。
復路も薬王院を通過していきました。仏舎利塔の分岐地点で、往路に女坂を選択しましたが復路は男坂を選択しました。この階段を登り降りするのが大変な時は、女坂を利用すれば足への負担が最小限になります。
男坂からも綺麗な都心の景色が見えます。
ナイトハイキングでは昼間にはない「あれ?なんか臭い…」という場面がよくあります。昼間とは違った匂いがするのは、夜行性の動物が活動し始めるからです。昼間は人間が活動するため、夜行性動物は安全を確保するために巣内で閉じこもっています。しかし、夜間は人間の気配がなくなるため巣外に飛び出てお宝を探しにいく習性があるのです。上の写真は「タヌキ」になります。接近するとともにすごい匂いが漂ってきました。私に対する警戒心はなく近寄っても逃げませんでした。
最初のスタートした地点が見えてきました。ゴールした時は、21:50。約3時間の夜間ハイキングになりました。
金曜日の夜は、高尾山口駅も静かな時間が過ぎていることが分かりました。もう少し時間があれば温泉に入ろうかな思ったくらい。これだけ空いていれば、温泉の湯にもゆったりと入れるはず。次は、温泉用のタオルも持参してナイトハイキング。金曜日の夜を趣味の時間に費やすことも大切。
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