大菩薩嶺(だぼさつれい)広大な稜線、そこに着くまでが一苦労。

奥秩父山塊の南端には大菩薩嶺連嶺と名付けられた連峰が並んでいます。その中の最高峰が大菩薩嶺です。大菩薩嶺の周辺は、北側:丹波山村、南側・西側:甲州市、東側:小菅村から囲まれています。スタート地点をどこに置くかによって大菩薩嶺の登山難易度は違ってきます。

登山ガイドを選んでいると、大菩薩嶺を掲載した本があります。中里介山の時代小説で扱われた山、深田久弥に選出された日本百名山。その名が世間に広まり、多くの大菩薩嶺の来訪者が絶景の感想を地元へ持ち帰ることでそれに興味を持った登山者が益々増加しました。ほとんどのガイドは甲州市からのスタート地点で、南側の「上日川峠」または西側の「裂石・丸川峠入口」が多く紹介されています。

青梅街道411号線は大菩薩ラインともよばれ、甲州街道20号線と並行しています。青梅街道は奥多摩町と丹波山村を越えて甲州市に繋がっているため、東京から自動車で甲州市のスタート地点まで行けることになっています。しかし、丹波山村へ入る前に青梅街道から左折して甲州街道へ南下する道路があります。その道路は山梨県小菅村に続き、大菩薩嶺を東側から登山できる場所へ行けます。

今回は、東京側に近い場所からスタートしようと計画していたため、小菅村の方から大菩薩嶺を登山してみました。大菩薩嶺の登山ガイドで、小菅村を出発地点としたコースを紹介している本はあまり売られていません。小菅村役場を抜けて、細い道を奥まで進んでくると駐車場がありました。ここへ到着したのが8:00。日本百名山周辺の駐車場であれば満車になっていてもおかしくありませんが、小菅村の方は駐車台数が2台だけでした。

しかし、大菩薩嶺の登山道入口は駐車場から30分以上も歩く距離に位置しています。登山道入口の途中に、白糸の滝入口という案内標示と一緒に橋が架かっていました。「白糸の滝」とは、深山幽谷の断崖から滑り落ちる真清水が一条の白い糸のように見えたことでつけられた名前になります。滝を見てここまで戻ってくるためには1時間を要します。

先ほどの登山者専用駐車場からは、さらに上の登山口まで自動車で進むことができます。しかし、道幅は狭くコンクリートの道路ではないため、段差、落石や対向車に注意しながら運転しなければなりません。

奥まで進んでいくと、1台の軽ワゴンが駐車していました。軽ワゴンの向こう側に何かの標識が隠れていたので見に行くと「大菩薩峠 登山口」という案内標示がありました。この山梨ナンバーの軽ワゴンの中には網や籠が入っていますが、大菩薩嶺にはどんな生き物がいるのでしょうか。

大菩薩峠登山口の手前でザックや靴、ストックを準備し、スタート地点を出発したのが9:00になりました。

スタート地点は渓流を見ながら登っていきますが、先方の橋を渡った後は渓流と再会することがなくなります。

橋の向側はコースが明確な状態ではありません。しかし、この近くに大菩薩峠の案内標示板があるため、矢印の方向に歩いて行けばコースが続いていきます。

奥多摩湖に近い小菅村は標高1050mから頂上を目指します。大菩薩嶺の南側にある上日川峠は標高1586mで、多くの登山者がスタート地点として利用しています。そして西側にある裂石・丸川峠入口は標高1016mから頂上を目指します。

小菅村の登山道は道幅が広く緩やかな傾斜で登っていきます。しかし、登山道の途中に落石が多くあるため、万が一を考えながら周囲の安全を確認してこのような場所を通過しなければなりません。小菅村ルートの特徴は、ほとんど・まったく人と会わないことです。そのため、自分の身は自分で守らなければならない使命が強くなります。

小菅村のルートは、ヒノキやシデ、ブナの木が豊富に生えていました。色んな木から鳥たちの鳴き声が響いていました。

1時間で1つ目の分岐路に到着します。日向沢も小菅村からのルートでここで合流できますが、登山時間はそれほど差がありません。

小菅村ルートは、東京都水道局の水源林が多く管理されています。しかし、2017年は台風の影響で倒木が増えてしまいました。根の部分から倒れている木も多くありました。

ルートの途中で糞が落ちていました。まだ乾燥していないため、近くにいる可能性を感じていました。上の方から鳥とは違う鳴き声が聞こえました。すると、2匹の鹿がこちらを向いていました。大菩薩嶺の西側の乾徳山に来たときは、鹿に近づいてもまったく逃げる気配がありませんでした。しかし、こちらの鹿はすぐに逃げてしまいました。山によって動物の性格も違うのかもしれません。

2時間程度進むと、ルートの途中に多くの巣箱が落ちていました。鳥は植物と密接な関係があり、お互いを守り合って生きていきます。巣箱の雛や卵が他動物から侵襲されたり密猟されることで自然のサイクルが崩れるため、鳥の数が減ることで森林が減少するリスクが出てきます。森林を守るためには、緑に潜む鳥の命も守っていかなければなりません。

ノーメダワは、丹波山村から大菩薩嶺を目指すルートの通過地点になります。丹波山村から登ってきた場合は、ここ以外にもフルコンバ分岐点という場所で今回の小菅村ルートと合流することができます。

このように橋が架けられているところは、急斜面により登山道が十分に確保できない場所に設置されていることが多くなっています。

小菅村ルートは登りやすくても、稜線出るまでがとにかく長い…。森林の葉によって日光が隠され、薄暗い中を長く歩いていかなければなりせん。3時間程度で明るい陽射しを浴びられる場所へ到着しました。最初は大菩薩峠と思って近づいてみると、「フルコンバ分岐点」という場所でした。先ほどの分岐路で丹波山村ルート方面(ノーメダワ)の案内がありましたが、ここでも合流することができます。

この写真を見ると、今回は右から上がってきたことになります。

フルコンバには、かつて山小屋が営業していましたが、残されたものは2つのベンチとなっています。甲州市の方から大菩薩嶺を登るルートは、複数の山小屋を利用しながら頂上を目指すことができるため人気が高くなっています。しかし、小菅村や丹波山村からスタートすると、大菩薩峠まで山小屋や休憩所がないためトイレを利用することもできません。女性登山客からは人気がないルートになってしまっているのです。

フルコンバを過ぎると、登山道に岩が多くなってきました。すると、丸みのある大きな岩が壁から飛び出しています。大菩薩嶺というだけに、仏様の顔のような形をした岩でした。

上に進むと雲取山と七ツ石山が見えてきました。左側は飛竜山になります。

4つ目の分岐点へ到着しました。ここへ来た時には「もうそろそろ大菩薩峠に着かないかな。」という気持ちが強くなっていました。本当に稜線に出るまで長く感じるルートです。

じつは、今の分岐地点からこの大菩薩峠は近くの距離にありました。大菩薩峠までの所要時間は3時間半となりました。

大菩薩峠から大菩薩嶺の頂上までは、雲取山に負けない大きな稜線が広がっています。ここまでは同じような景色を見ながら長い登山道を歩いてきましたが、ここの景色を見ることで一気に後悔という気持ちがなくなります。

反対を振り向くと、大菩薩嶺の中でも有名な介山荘があり、複数のルートが合流する地点になっています。小菅村から大菩薩峠までは、一人も会うことがないため静かなイメージがありますが、ここからは賑やかなイメージに変わります。

介山荘の奥には、公衆トイレが設置されています。ここから頂上まではトイレが設置されていないため、しっかりとトイレを済ませてから頂上を目指すことをお勧めします。介山荘と公衆トイレの間には、上日川峠から上がってくる通路がありました。

大菩薩峠では、展望盤やベンチがあるため、お昼休憩をとる人も少なくありません。この先の尾根でたくさんの展望を楽しむことができるため、どこでお昼休憩にするか考えながら進んでみるといいかもしれません。

稜線は岩が多く傾斜の厳しい場所もあります。小石によって滑りやすなるため、降りるときはとくに注意が必要になります。途中で、三界萬霊塔が建っていました。左にある白い石碑が倒れ、新たに三界萬霊塔が建てられています。三界萬霊塔は、彷徨う霊たちを祀る(まつる)ために色んな場所に建てられるようです。ここも旅先で亡くなられた方に対して建てられたことが考えられます。

大菩薩峠は中里介山(本名:中里弥之助)の時代小説「大菩薩峠」「氷の花」で扱われた名作発想の地として、本人が大菩薩峠記念碑を建立しました。自由民権運動が盛んな頃、中里介山は社会主義思想を推奨した時期もあったため、政府や地域との関係に複雑な過去があったことが考えられます。

大菩薩峠の次は、親不知ノ頭(おやしらずのあたま)に着きます。ここでもしっかりと展望を楽しめるため、お昼休憩にシートを広げて食事をしている人がたくさんいました。

親不知ノ頭からの南東を振り返ると、大菩薩峠が見えます。そして、南西側には上日川ダムが見えます。次の賽ノ河原(さいのかわら)、妙見ノ頭(みょうけんのあたま)は北東に見えます。

賽ノ河原(さいのかわら)には、大菩薩嶺の避難小屋があります。他の山では休憩や宿泊にも利用できる避難小屋がありますが、ここは避難時以外の使用はマナー違反となっているようです。にしても、色んな場所で石を積み重ねていく人が多いようです。

今回の登山ルートの中でいちばんの難関はここだと考えられます。妙見ノ頭(みょうけんのあたま)に向けて岩を登っていきます。土面ではないため、転倒したときに身体にかかる負荷がとても大きくなります。ストックを収納し、両手をフル活用して急角度の坂を登っていきましょう。

妙見ノ頭を過ぎると神部岩(じんぶいわ)に到着します。

神部岩(じんぶいわ)から大菩薩峠を振り返ると、介山荘が見えなくなるほど進んでいることが分かります。上日川ダムも先ほどよりも小さく見えます。神部岩は空の状態によって南アルプスや富士山が展望できる場所です。2017年の初夏は晴天が続いていましたが、それ以降は雨天に見舞われ全国的に登山活動が少なくなっています。

神部岩を越えると、雷岩(かみなりいわ)に到着します。

雷岩(かみなりいわ)は大菩薩嶺の中で頂上の次に高い場所で、唐松尾根との合流地点にもなっています。唐松尾根は、上日川峠から大菩薩峠を通過せずにショートカットでここまで到着できるルートになっています。標高は2040mで、展望がいいため休憩の大人気スポットになっています。多くの人は、雷岩を休憩に使用しています。しかし、稜線に出ればどの通過ポイントでも展望がいいため、お昼休憩は身体が十分に休める場所を選ぶことをお勧めします。

雷岩の次は、大菩薩嶺の頂上になります。標高は2057mで、日本百名山・山梨百名山に選ばれています。今回は小菅村ルートを使用し、頂上までの所要時間は昼休憩を含めて5時間半になります。大菩薩嶺頂上の向側(西側)には丸川峠に向かうことができます。甲州市側から登山した場合は、丸川峠を経由して裂石まで下山するルートも選べます。

大菩薩嶺は、日本百名山の中でもレベルはそれほど高い場所ではないと聞いていましたが、選定するルートによってレベルの捉え方が全く変わってくることが分かりました。今回は小菅村ルートを選出したことで誰とも会わない大自然を堪能し、尾根にたどり着いた時の解放感や展望に大きな喜びを持ちました。登山時間は登り5時間半、下り3時間となり、奥多摩の最高峰と並ぶ難易度でした。とにかく、「スタミナ」が命になる小菅村コース。またクリアしたくなる気持ちが大きくなる山でした。











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